いよいよ新年度が始まりました。新卒さんの入社、昇進、異動など、まさにスタート!といったこの季節、環境も大きく変わり、心機一転!と張り切っている方も多いのではないでしょうか。
私も今週は、弊社主催の新入社員研修の真っただ中で、フレッシュな約50名の皆さまとビジネスマナーや社会人基礎力の学びを深めています。
緊張感と期待が入り混じる社会人の第一歩、その瞬間に立ち合えることに今年も感謝しております。
会社とは、組織を通じて何かを成し遂げ、利益を上げていくものです。組織ですから、皆が同じゴールを見ていなければ、うまく機能することができません。今回はこの季節だからこそ、「どういう会社を目指すか=経営理念」を知ってもらうことの重要性と、「問題の繋がり」についてのお話をいたします。
課題の洗い出しをしてもうまくいかない
とある企業さまのお話です。
いわゆる「現場」を中心とした建設関連事業のため、社員さんも職人気質の方が多く、技術を若手へ引き継ぐことが重要な職種の方が在籍しています。
「若手育成」「スキルインプット」「コミュニケーション」などが非常に大きく関わると言えるのではないでしょうか。
この企業さまはこれから事業を拡大していくにあたって、しっかりと社員の育成をしていかなければならないとの想いを持ち、弊社がお手伝いすることとなりました。
弊社にご相談をいただく前から以下の課題がありました。
- 上司と部下の関係性があまり良くない
- チーム内連携と教育体制が不十分である
そしてこれらを解決すべく、これまでもさまざまな対策をとってこられていたそうです。パーソナリティ診断などのアセスメントツールを使い、人材それぞれの個性と「違い」を把握し、コミュニケーション強化のための社内研修を外部に委託することもあったようです。
課題の洗い出しは、この企業さまが問題と向き合い、積極的に解決を進めていたということでもあり、素晴らしいことです。
しかし、これらの対策が効果を発揮できたかというと、なかなかうまくはいかなかったようです。
対策が「刺さらない」理由
まず最初に対策として取り入れたのは、マネージャー職に対する部下に対する育成スキルアップ研修やハラスメント対策研修など。「マネージャーの育成」を図ろうとしたのですね。とても素晴らしい対策です。
しかし、これらの対策は人によっては効果的に作用しませんでした。
- 研修を受けはしたが、単に「受けただけ」のように見受けられる
- 研修に対する思いに温度差がある
などがあり、多くのマネージャーが、本来マネージャーに必要な「会社全体に対する自身の役割の重要性を感じ、主体的に考える」までに到達できずにいたのです。
必要な対策と適切なスキルインプットの機会を提供したにもかかわらず、これらの対策が奏功しなかったのは一体なぜなのでしょうか。
マインドセットの難しさ
よく話を聞いてみると、マネージャー職に就いている方の多くは、そもそも課長職になど就きたいとは思っていなかったということがわかりました。
この企業さまは現場仕事、いわゆる「職人系」のスペシャリスト思考の強い社員さんが在籍する会社です。仕事ができて年次も高い、そのスキルを使って今度は部下を育成してくれ、と会社が望んでも、マネージャーというポジションを喜ぶ人ばかりではなかったということですね。
職人として技術を発揮することに誇りと喜びを感じる人が、マネジメントの特性とかみ合うとは限らないというのは納得のいく話ではないでしょうか。
仕事ができるので次はマネジメントを!と配置しても、マネジメントの能力と職人としての仕事はまったくの別物。結果として、マネジメント志向の低い方々をマネージャーに据える体制となっていたのです。
この管理職としてのマインドセットがうまくいっていない状況を、どのように立て直せば良いのでしょうか。
点と点が繋がらない対策と根本原因
この状況に危機感を持った人事の方は、今年度はより研修を強化し、マネージャーとしての意識を醸成しようと打開策を考えていました。
そんな中、弊社にもご相談をいただいたのですが、話をお聞きするなかで感じたのが、「対策が点を打つばかりで、繋がっていかない」という感触でした。
「マネージャーが育たない、よし、マネジメントスキルの研修をしましょう」
「管理職のマインドセットがうまくいっていない、よし、マインドセットの研修をしましょう」…
対策としては決して間違ってはいないはずなのですが、どうにもしっくりときません。「点と点が結び合い、互いに作用し合い、良い方向に向かう」という「繋がり」が感じられないのです。
また、ヒアリングの中で判明したのですが、「経営理念が伝わっていない」という課題も浮かび上がりました。
この企業さまでは経営理念の変更があったばかりでした。しかし、それが社内に浸透していないのではないかという懸念があったのです。
より良くしたいため、経営理念を変えたはいいが、それが伝わっていない…これがどのような事態を引き起こすのでしょうか。
行動指針が統一されない
最大の問題は一人ひとりの行動にズレがあることでした。
一部、人材のミスマッチやマネージャーの適性に問題があったのは事実ですが、社員さんは皆、真面目に仕事に取り組んでいらっしゃいました。しかし、上司も部下も、それぞれが熱心に取り組んでいるのに、なぜか噛み合わないのです。
人が行動を起こす際には必ず理由があります。
仕事の場合もそうです。求める結果に向かうべく、どのように行動するかが決まってきます。
しかし、この企業さまでは肝心の「経営理念」、つまり「どんな会社を目指すか」「どのような取り組みをしていくのか」という、根本の部分が浸透していませんでした。
行動指針が統一されていない状況で、上司と部下、それぞれが動いていたのです。
「経営理念」の定義を再確認
「経営理念」を辞書で引くと、「経営者が持っている基本的な考え方、企業の社会的な役割や管理・運営の考え方」とあります。
会社の基本的な考え方、精神性や行動の方向性を明文化したもの、ということになるでしょうか。
まさにすべての社員が理解し、行動する際の指針となるのが「経営理念」なのです。
この「経営理念」が理解されないままだと組織はどうなるでしょうか。
行動の指針が統一されていないのですから、各々が自分なりの勝手な判断で動くことになります。
結果に向かう道筋、「仕事のやり方」が違ってしまっていたのです。
この「やり方の違い」が根底にあることで、ミスコミュニケーションが起こってしまっていました。上司と部下の関係性の不具合は、これが根本の原因だったことが判明したのです。
ミスコミュニケーションとは、「双方の認識の違いによって受け取り方が違うことで起こるコミュニケーションの齟齬」のこと。これではいくら研修をしても、上司・部下間の関係性が改善されなかったのも納得です。
連動する対策を!
ここで打つべき対策が見えてきました。「経営理念の理解を深める」ことは、対策の大きな柱となります。
経営者がしっかりと「こんな会社にしていきたい」ということを、社員に伝えきれていないことが往々にしてあるのです。
行動理念、「目指すべき会社像」がなければ、統一されたゴールを目指すことはできません。
耳ざわりの良いスローガンを掲げているだけでは、経営者の熱い想いは伝わりません。可能な限り、しっかりと「伝える」ことを意識的に行っていただきたいのです。この分析の結果をもとに、改めて経営理念や行動指針について考える機会を設けることにしました。
また、マネージャー職に対する資質の問題については、まずは「職人としての資質と管理職の能力は別」と考え、適切な評価制度とキャリアアッププランを取り入れることにしました。
人にはそれぞれ個性と得意分野があります。優れた職人社員は、職人としての能力を最大限に生かしてもらうほうが、本人も会社にとっても幸せなはずです。管理職に就くこと=キャリアアップというシステムそのものを見直し、職人の仕事を追求する形での昇給昇進の制度を構築することなども、対策として考えられるのではないでしょうか。
「繋がり」の見つけ方と目指すべき場所の可視化
組織の問題が起こった際、人材の可視化、研修によるスキルインプットなど、しっかりと対策をされる企業さまも多く、それは素晴らしいことです。
しかし、対策を施してもなかなか問題の解決に至らない企業さまがあるのも事実。
今回のケースでも、企業さまとしては問題と向き合い、研修による対策を打っていましたが、解決できない状況でした。
ピンポイントで課題への対処を行っても、根本的な問題の解決は難しいということですね。現場でうまく作用するには、OJTも取り入れた継続的なアプローチが必要になります。
組織も問題も、「点の集合体」ではありません。それぞれが繋がり、影響し合い、今の状況があります。その「繋がり」を把握することが重要なのです。
このケースでは、弊社が外部から関わることで、問題の繋がりや根底にある原因を考察することができました。
自分達の問題に気づくことはとても難しいものです。組織の内側にいると、自身を客観的にみつめることができないからです。
育成、採用、配置、どこで不具合が起きているのか、このサイクルの妨げになるのは何かと細かく検討していくことで、ピンポイントではない「繋がり」に着目した対策ができるかもしれません。
「客観」を取り入れてみよう!
いかがでしょうか。
組織は点と点が繋がり、構築されています。組織の問題もまた、点と点が繋がってこそ解決できるものなのです。
組織の問題の根本原因がわからない、対策をしてもなかなか刺さらない、このような時は弊社のような「外からの目」を取り入れていただくことをぜひ、おすすめいたします。
そして「どんな会社を目指すか」を十分に説明すること!ここは根本的な問題解決に欠かせません。
この時期だからこそ、今一度振り返っていただければ幸いです。
会社は、点(Ten)と点(Ten)が繋がって、素敵な組織(Maru)になります。株式会社Tenmaruは、そんな素敵な組織をつくるため「問題の繋がり」を可視化し、改善するお手伝いをしてまいります。