3年目に発覚!コロナ禍入社の新卒社員のちょっと怖いハナシ

20240311

もう少しで今年度も終わり。
この季節の時間経過は本当に早く感じられますね。

そしていよいよ、皆様の会社にも新卒社員がやって来ます。

今回はアフターコロナの今だからこその「コロナ禍入社の新卒社員」のリスクについてお伝えします。

目次

育成期間は3年間

階段

新入社員の育成は最初の入社1年目がもっとも肝心な時期だ、というのは皆さまのご想像のとおりです。

Tenmaruでは、もっとも力を入れるべきは1年目、そして継続して最低でも3年間は「育成期間」として中長期的なプランを立てていくことが大切だと考えております。

新卒社員の育成についてはこちら

そして、事情は違えど入社1年間の育成を通じて、「完璧とは言えないかもしれないが、我が社の新人育成はそこそこに機能している」とお感じになっているかもしれません。
今までの体制で十分社員は育ってきている、ということであれば何も問題がないようにも思えます。

しかし、その育成方法は、環境が少しでも変わってしまうととたんに崩れてしまうものかもしれません。

コロナ禍入社の新卒さん、とある例

悩むビジネスパーソン

最近、このようなご相談を受けました。

「入社3年目を迎える、そろそろ一人前になる頃の社員が、期待したパフォーマンスを発揮できていない」

この会社では、最近になってフルリモートから一部出社にワークスタイルが変更されました。すると、一部の新人社員の出社に対する意欲が低く、遅刻や欠勤が多くなったそうです。

加えて積極性も見えず、主体性も責任感も希薄。仮に仕事に対する意欲が低下しているのであれば、強い言葉かけは逆効果になるかもしれないと考える先輩・上司たち。
退職という事態は避けたいのだが、どう接したら良いのか…というご相談でした。

さて、このケースの新人社員さんには一体何が起こり、このような状況に至ったのでしょうか。検証していきましょう。

コロナ禍における新卒さんの環境

PCで仕事をする人

この社員さんは24年4月で3年目、新人社員から若手社員ヘと成長すべき時期ですが、本来期待されるパフォーマンスを発揮できないでいます。

この世代の状況を整理してみましょう。

新卒入社は22年頃。コロナが世界中に蔓延してから約2年、新しい生活様式もすっかり定着した頃です。
リモートワークは完全に定着し、出社しない働き方がスタンダードと言っても過言ではない世界情勢がありました。

そして、彼ら彼女らもまた、入社時から当たり前のようにリモートワークでの出勤をしていました。つまり、彼にとって働くというのは、リモートワークのことであり、「出社」がイレギュラーとも言える状況があったわけです。

リモートワークのメリットが多数あるのは説明するまでもありません。感染予防に加え、通勤の必要がなく時間を有効に使えること、オフィスコストなどの経費削減など様々あります。
しかし、リモートワークの時代を経験したからこそ、対面の大きなメリット、強みも認識することができました。

どちらが良い、わるいという話ではなく、それぞれに強みとウィークポイントがあるとでも言いましょうか。

役割がはっきりと決まっている仕事においては、リモートワークはひとりの環境で業務に集中できるというメリットもある一方、どうしても同じチームや部署内のコミュニケーションは希薄になってしまいます。

オンラインでの打ち合わせをいくら増やしたところで、隣の席にいる先輩に、ちょっとした質問などはできません。
また、上司や先輩にとっても、新人の普段の様子を見ながら、「困っていることはないか」など気軽な声かけはできなくなります。

目標となる先輩の姿が見えにくく、お手本となる仕事ぶりも見ていません。上司先輩の仕事の実態が掴みにくく、あの年齢になったらこれくらいの仕事を任されるのだな、という想像を働かせることも当然、できません。

そして、この状況こそが、彼ら彼女らが考える「働くこと」のすべてでした。

「育成できていない」ことに気づかない

相談する様子

声かけや気軽な質問など、こういった「ちょっしたこと」の積み重ねが実はとても大切だったのだと気づけば良かったのですが、今回のケースでは十分育っていて欲しい時間が経過して、このような事態が露呈したわけです。

出社の意欲が低下しているように見えるのは、ある意味仕方のないことです。
彼ら彼女らにとっては「リモート」こそが働くスタイル。出社はイレギュラーな事態と捉えています。ひょっとすると、出社する意味もよく理解できないのかもしれません。

主体性のなさ、責任感のなさも、想像すれば理解できます。
新卒社員さんの立場に立ってみれば与えられた仕事(役割)を一つ一つこなすことが良しとされ、(それ以上の)上司・先輩の「主体性」「責任感」を持った働き方を間近で見ることも、体感することもできていません。
ロールモデルもなく、言葉だけで「もっと責任感を持って」と言われても、何のことだか理解すらできていない可能性があります。

新卒社員さんが1年目のときは言われたことを、とにかくひたすら指示どおりに動いてきたからこそ、上司や先輩は「今までの体制で十分、社員は育ってきた」と思えていたのでしょう。
しかし、2年目、3年目となると新卒社員さんにも主体性を求められ、仕事の領域が徐々に変わり始めます。そのとき、コロナ禍前に入社した新卒社員に比べて「あれ?思ったように育っていない」と上司や先輩が慌て始めたのでした。

もちろん、上司も先輩もコロナ禍前との新卒社員と同様に振る舞っていましたし、適時指導はしていました。必要な研修も取り入れていました。
しかしそれは、毎日出社し、上司・先輩にいつでも聞ける環境があったからこそ、機能していたわけです。
そして、リモートワー下で「育成に必要だったモノ」が欠けていたことに、誰も気づかず、今に至ってしまったということなのではないでしょうか。

入社3年目を迎えるまで誰もこの事態に気づけなかったというのは、とても怖い話です。

そもそもの「基準」が違う

会議室

彼らは入社時からリモートワークが主体の生活で、目の前にほかの働く仲間の様子がないからこそ、与えられる仕事をこなすことイコール仕事という認識を持っていましたね。

この状況であれば誰しもそう感じるのでしょうか。

もちろんそんなことはありません。コロナ禍前の「出社」を基準として働いた経験がある人はリモートワークがイレギュラーな働き方との認識を持つでしょう。

そう、彼らコロナ禍の新入社員は、前提となる「基準」が違っていました。そして、「基準」というものの存在に考えが及ばなかったことこそ、問題の本質だったのですね。

コロナ禍前であれば当たり前に培われた社内ルール遵守の精神や責任の重さなどは、リモートワークになるとどうしても緩くなりがちです。上司や同僚の目もありませんし、ましてや社会人経験のない新卒社員に、リモートで自身を厳しく律して仕事に取り組んでくださいというのは無理な注文かもしれません。

それによって、本来は自然と身に付いたはずの社会人としての振る舞い—始業時間に仕事を始めることの重みや、会社内における暗黙の了解などを身につけられなかったのです。
これでは出社への意欲が低く見えてしまうのも理解できるのではないでしょうか。

どうすればよかったのか

説明する様子

2022年頃の情勢から言えば、リモートワークとなるのは必至の状況でした。
それでは、リモートワークによって社会人未経験の人たちの自主性を引き伸ばす方法はなかったのでしょうか。

新卒社員さんが最初からリモートワークに従事するとどのようなことが起こるのか、今までの新卒さんとの環境の違い、それによって変わる感じ方などをもっと深く検討すべきでした。

そして、周囲の人の役割を明確にすることも必要でした。
仕事を見守る上司、相談に乗る先輩など、その人をどのように育成していくか、どのように関わるのかの計画が必要だったのですね。

今までは席が近い先輩が面倒を見たり、直属の上長が折をみて指導したりする形で「なんとなく」育成されていたのが、リモートワークという環境の変化で機能しなくなってしまったのです知らず知らずのうちに日々、周囲の先輩たちからもらえるアドバイスや相談も、育成に必要だったことに気づくことができませんでした。

リモートワークで起こった「関係性の質の変化」によって、人間関係が希薄になり、今まで自然とできていた対話や成長の見守りも十分ではありませんでした。

より働き方が多様化するこれからの「育成」には、あらゆることを想定した体系的な計画と、意識的な見守りが必要ということなのです。

しっかりとした育成プランが根底にあれば、コロナ禍のような不測の事態に陥っても、外的要因で環境が変化しても、その状況の中での育成方法を見つけることができたのではないでしょうか。

突然のことでもできる対策とは

コロナは突然、なんの前触れもなく世界を襲いました。リモートワークを逃れることはできなかったでしょう。そんな状況でもできる対策はあったのでしょうか。

このケースの場合、新人さんは、与えられた仕事はきちんとできますし、指示にも従うことができました。しかし、3年目ともなるとそうはいきません。能動的に仕事をしていかなければならない立場となります。しかし、その部分がまったく育っていませんでした。

彼らは与えられた仕事を仕事としてこなせても、その本当の意義までは見えていなかったのです。自分が受けた仕事はこの先、どのように機能して会社の事業に貢献していくのか、上の階層の仕事を理解していませんでした。

この問題は、チーム内における各メンバーの仕事内容、仕事を任せる際のゴールイメージの共有、成長段階を見据えた目標設定などである程度はカバーすることができるかもしれません。

また、日々の業務進捗やPDCAの確認、定期的な面談(1on1)などで、彼らの仕事に対する理解度や習熟度を計り、キャリアプランについて話をするのも効果がありそうです。

「育成」のプランは個性に合わせて

花

いかがでしたでしょうか。コロナ禍において、私たちの生活は大きな影響を受けました。リモートワークの発達は、大きな恩恵もありました。一方で、長い時間を経て表面化する難しい問題もはらんでいた、そこに気づけなかったという、リモートワークに潜む、ちょっと怖いお話でございます。

新人の育成はとても大切です。しっかりとしたプランと定期的な見直し、聞き取り、キャリアプランの見直しなどを包括的に行う必要があります。

さらに大切なのは「その人の個性に合った育成」です。

これは方法論というよりも、「相性」と言った方が正しいかもしれません。育成担当者と新人さんのマッチングは非常に重要です。

今回のケースですと、新人さんのアセスメントを確認したところ、慎重かつ、受け身の姿勢が強いという傾向が見受けられました。
一度インプットされた認識を守り続ける傾向が強い、とも言えるタイプです。

リモートという孤立しがちな環境で、与えられた仕事だけをこなすルーティン化が起きてしまうのもうなずけます。
新卒社員さんの特性を理解した育成担当者がいれば、結果は違っていたかもしれません。

アセスメントは主に採用などの人事領域で取り入れられていますが、こういった「相性」を見るにも非常に優れた力を発揮してくれます。

アセスメントはより良い組織を作るうえで大きな武器となるものです。アセスメント活用とその注意点については、こちらで紹介しておりますので、ご覧いただければ幸いです。

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