組織体制が変わったり、従業員の退職があったり、新規事業やプロジェクトをはじめたりする際、人材配置は大きな鍵を握っています。その先の経営の運命を大きく左右する舵取りとなるからです。
近年では、人の勘に頼ったり、慣例にしたがったりする方法ではない人材配置の重要性が見直されています。
そこで用いられるのが人材アセスメント(以下、アセスメント)です。
本記事では、以下の点について解説します。
- 人材配置の考え方
- アセスメントの概要
- 人材配置とアセスメント
- アセスメントツールの導入と活用のポイント
経営をさらに向上させるために人材配置を最適化したいとお考えの方はぜひご覧ください。
アセスメントを採用にも活かすことについては以下の記事でくわしくお伝えしています。
人材配置はなんのために行うのか
従業員を招き入れたら、「人材配置をしなければならない」とお考えかもしれません。
たしかに採用(雇用)と人材配置(配属先の決定)にはセットで取り組むものですが、配置することが目的ではないのは明らかです。
人材配置は、よりよく経営を行うためになされるものです。
なんとなく向いていそうだから、本人が希望しているから、ジョブローテーションで順番に…と、配置や配置転換の理由にはさまざまなものが思い当たるでしょう。
しかし、究極の目的は「経営の向上」―すなわち、収益を増やしたり、将来に備えたり、会社の持続可能性を高めたりするために人材配置があるのです。
先入観にとらわれず抜擢人事を行ったり、ジョブローテーションで幅広い部署の業務を経験させたりすることで適性が発揮されたり、思わぬ逸材が発見されたりすることもあるかもしれません。
その偶然に賭けることももちろん素晴らしいものです。
一人ひとりを大切にできるのであれば、従業員にとってもチャンスが多く用意されている魅力的な職場であるとも考えられます。
一方で「風の時代」「VUCAの時代」と言われる今だからこそ、市場や世の中の変化に柔軟に対応し、素早く人員配置も最適化したいというのが企業の本音でもあります。中小企業のように、人材が不足しやすい環境にあればなおさらです。
そこで、人材配置を円滑に行うためにアセスメントを行う企業が増えているのです。
人事領域におけるアセスメントとは
アセスメント (assessment) とは、「評価」を意味する言葉です。人事領域のほかに教育、環境、医療福祉などの領域で用いられています。
「評価」は2種類ある
一般的に「評価」は大きく2種類にわかれます。
- 定められた基準に到達しているかどうか、どの程度のレベルにあるのか(判断)
- データ・理論に基づく客観的評価
1の評価には、評価者の判断が介在します。人事評価や試験の合否などはこのパターンの評価です。人事評価の場合は組織(会社)が基準を設けますが、基準に対する到達度は評価者が判断します。
2の評価には、基本的に評価者の判断は無関係です。あくまで「データがどうなのか」を純粋にみつめ、評価を理解します。
人材アセスメントは基本的に2のパターンの評価です。上司や組織が総合的な判断を行う材料にもなる一方で、アセスメントとはあくまで客観的なものです。
評価者によるブレを排除できる点は、アセスメントの大きな特長です。
人事とアセスメント
人事領域におけるアセスメントは、以下の場面でよく用いられます。
- 採用
- 人材配置
- 人材育成
- マネジメント
人事領域でアセスメントを行う目的は「経営を推し進めること」ですが、アセスメントでわかることは従業員(採用候補者)の特性とその時点の状態です。たとえば、アセスメントを通じて以下のようなことが把握できます。
- 行動の傾向
- コミュニケーションスタイル
- 考え方の傾向
- 価値観
- 喜びを感じること
- ストレスを感じやすい状況
これらが把握できることで、人事のあらゆる場面でのリスクを最小限にでき、企業の重要な経営資源である人の力を最大限に高められます。
採用の場面では面接だけでは見抜けないことがわかり、ミスマッチを減らせるでしょう。
人材配置においては、配置による混乱を防ぎ、最短で成果を出しやすくなるでしょう。
人材育成の場面では、より能力を引き出しやすくなるでしょう。
マネジメントにおいても、上司と部下の関係性が良好に保たれ、エンゲージメントを高める効果が期待できるでしょう。
かつては、ベテラン人事スタッフや経営者の目利きによって人事が行われてきました。
私たち人間には共感能力もあり、長年の経営や人事経験によって培われた「人を見抜く目」がある方の存在も否めません。
しかし、時代の流れによって働く人の価値観も多様化し、働く場でのかかわり方も千差万別です。
どんなに愛する従業員や部下であっても、毎日ともに過ごしていても、お互いの一部分しか見えていないものです。
労働市場の流動化の波もあり、「採用してみなければわからない」「異動させてみなければわからない」と、一旦動かしてから考えることもまた、難しくなっています。
フィットしないと感じたら、従業員の側から去っていくことのハードルが下がっているのです。
そこで、ミスマッチや生産性の低下など、組織へのダメージを押し下げるために、客観的なデータに基づく評価、アセスメントが注目されています。
人材配置とアセスメント
ここからは、人材配置におけるアセスメントの意義について考えてみましょう。
人材配置は、どのようなときに行われるものでしょうか。
- 欠員補充
- 定期的な人事異動
- 新たなプロジェクト・事業の立ち上げ
- 昇進・昇格
上記のようなタイミングが想定できます。
減員になっても業務が滞りなく行われる場合や、そのポストがなくても問題がない場合には、異動も配置も行われないはずです。AIや機械が仕事を担える時代でもあり、人が減った分ツールや設備で補うという話も珍しくありません。
そんな今でも「人材配置」が行われる理由は、人の力で生産性を高めたいからです。
現代においては、単に労働力や人数として人をあてがうというのではなく、「その人がいることで組織がさらに良い方向に進む」ことが、人材配置成功の条件だとも言えます。
そこで、アセスメントによって、組織(会社全体、あるいは部署・プロジェクト)の生産性が高まるかどうかを判断する材料を得るのです。
前項で、アセスメントでは一般に次のようなことが判明するとお伝えしました。
- 行動の傾向
- コミュニケーションスタイル
- 考え方の傾向
- 価値観
- 喜びを感じること
- ストレスを感じやすい状況
これらは生産性に大きな影響を与えますが、重要なのは「組織全体」を考えて人材配置を行うことです。
ひとり優秀な人を招き入れたからといっても、その人と既存のメンバーとの相性が悪ければ、組織としての力は出せません。
そこで、アセスメントで得られたデータをどのように活用するのか、あるいはどのようなデータを得るのかが重要です。
アセスメントを最大活用するツールの選び方とポイント
よりよい人材配置を行うには、以下のことも重要です。
しかし、以下のような内容は個人のアセスメントを行うだけではわかりません。ほかのデータやヒアリング、観察、試験などを組み合わせて総合的に判断するものです。
- ビジネススキル・マナー
- 担当業務のスキル(テクニック)レベル
- 経験値
- その仕事に対する適性
- メンバー・上司(部下)との相性
- 配置の適合度
アセスメントを用いて上記のことの判断を行うには、以下の情報も必要です。
- 組織のメンバー(上司・部下・同僚)のアセスメントデータ
- 組織全体の概況(メンバーや仕事のバランス・生産)
- 組織が進みたい方向(方針・計画・求める技術力やレベル)
- 組織全体の風土や価値観
せっかく個人のアセスメントを行っても、「うちはこんな雰囲気だから」と、主観を入り込ませて最終的な判断を行ってしまうことで、人材配置のミスマッチを招きます。
重要なのは、客観的な情報を揃え、権限のある人が最終的に判断を行うこと。
そうすることで、評価者ごとのブレを最小限に抑え、好き嫌いや忖度・馴れ合いではなく最適な人材配置をクリーンに行えるようになります。
人材配置を成功させることで成果が出しやすくなれば、従業員のエンゲージメントも高まります。
勘に頼ったり、変に遠慮したりする人材配置よりも、結果的に従業員の満足度も組織の力も高まると、私たちは考えています。
最適なツールを選び、よりよく活用する
人材配置を成功させるためには、「なんでもよいからアセスメントを行う」のでは意味がありません。
「必要なデータを得ること」、そして「データを利活用すること」のいずれも大切なことです。
アセスメントを行うには、多くの場合アセスメントツールを用います。
性格検査のようなものから行動科学に基づくテスト、実施方法もスマホでできるものから紙で受検するものなど多岐にわたります。
数多あるアセスメントツールのなかで、自社にどのようなツールが適しているのか、使いやすいものは何かというのは、組織の規模や業種、状況によっても異なります。
また、ツールを導入して得られた情報をそのままにしておくのでは、宝の持ち腐れです。
情報を読み解き、人事施策に落とし込み、PDCAを回すことで、採用から育成・マネジメントなどを総合的に整えることが可能です。
アセスメントで人事の力を高めるために
人事にアセスメントを取り入れることで、人材配置だけでなく採用や育成など、さまざまな場面で役立ちます。
当社では、アセスメントツールの導入や活用のお手伝いをしていますが、以下のような事例が多数あります。
- アセスメントの結果をもとにチーム編成を行い、職場内の人間関係が改善した(不満が減った)
- アセスメントツールの使い方やデータの活かし方の研修を行い、アセスメントを活用した人事施策を打てるようになった
- 採用時にアセスメントを行い、ミスマッチによる離職が減った
アセスメントは、ただ行うだけでなく、状況に応じてうまく利活用することが組織の力を高めるためのポイントです。
貴社にあったアセスメントのあり方・活用法を、Tenmaruにぜひ、ご一緒に考えさせてください。
アセスメントを正しく活用すれば、離職率の低下や従業員エンゲージメントの向上だけでなく、会社の業績UPなど、経営への好影響が期待できます。
人事の力で貴社の経営をさらに推し進めるために、ぜひ一度ご相談ください。