2024年、年が明けてから、ここ東京でも氷点下を下回る気温を記録しており、まさに真冬のシーズン!といったところですね。寒暖差での体調不良やインフルエンザの流行も続いております。皆様もお身体にはお気をつけくださいね。
さて、今回は「ハラスメント対策」を実施した企業さまのお話です。
ハラスメント対策は、過去にもここnoteで何度か取り上げてまいりました。
パワーハラスメント関係及びセクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント関係の法律改正が行われ、中小企業に関しても2022年(令和4年)4月1日から義務化されました。
法律施行をきっかけにハラスメント対策に乗り出した企業さまも多くあるかと思いますが、ハラスメント対策を行うことで会社に起こる変化とはなんでしょうか。
「ハラスメント相談窓口」を外部委託する選択
とある建設関連企業さまでの取り組みです。
会社規模は500人ほど、現場作業も多い職場です。
現場仕事は指示する人される人という関係性で進むことが多く、その多くが共同作業になり、期限内に仕事を終わらせなければという時間的制約もあります。無事に納期までに完成させる必要もあり、安全に考慮して作業しなければならないため、言動も荒っぽくなりがち。指示や注意喚起からハラスメントが起きやすい職場環境と言えるのではないかと思います。
こういった現場のあるお仕事、昔であれば新人を怒鳴りつけて仕事を覚えさせる、なんてことも多くあったのでしょう。
しかし、時代は進みました。会社としてもコンプライアンスを重視し、ハラスメントは許されないことだと示していくのは素晴らしいことだと思いますし、そうならなければいけないとも思います。
そして、ハラスメント対策の相談を弊社でお引き受けすることとなり、ハラスメント相談窓口の委託とハラスメント研修を実施することになりました。
こちらの企業さまが最初に「ハラスメント窓口を外部委託しよう」という選択をされたのは、ハラスメント問題と本気で向き合おうという姿勢のあらわれです。
そして、この企業さまはハラスメント問題を超えた対策を進めていくことになります。
ハラスメント対策は企業の義務であり盾でもある
こちらの企業さまもそうでしたが、令和4年に施行されたパワーハラスメント防止措置をきっかけにハラスメント対策に乗り出した企業も多いのではないでしょうか。
しかし、そもそもハラスメント対策は、「法律で決まっているから」しなければならないものなのでしょうか?
ハラスメントは企業の脅威となり得る重大なリスクです。
些細なことがきっかけで、ハラスメントが目に見えない形で進行し、当事者は誰にも相談することなく退職、そしてある日、労働基準局から連絡が来る、というのは現実に起こることです。
そして、企業にとって大変に不名誉であり、社会的信用を大きく失墜させるというのは言うまでもないことでしょう。
ハラスメント対策は、より良い職場環境のため、というようなウェットな問題ではなく、企業が経営を続けるために必要な、「やって当たり前」という当事者意識が必要な問題なのです。
しかし、ハラスメントはしっかりと対策できる問題でもあります。ハラスメント対策は義務であると同時に企業を守ってくれる、頼もしい存在と考えていただきたいのです。
今や「義務」となったハラスメント対策。上記の企業さまは、ハラスメントの起こりやすい環境要因を自覚し、ハラスメント相談窓口の設置とともに、ハラスメント研修とアンケート調査を実施いたしました。
その結果、どういったことが起こったでしょうか。
ハラスメント対策の副産物
アンケートを集計した結果、出てきたのはコミュニケーションの問題でした。
仕事をするうえでコミュニケーションは欠かせません。しかし、ベテランとと若手の間にはどうしてもジェネレーションギャップが生じます。
ベテラン社員は年齢を重ね、経験は積んでいるはずなのに、若手社員にどのように接していいのかわからない、自信を失ってしまいます。
一方の若手社員は、過度なコミュニケーションは望んでおらず、コミュニケーション研修そのものの必要性を感じていないという意見すらありました。
ハラスメント研修を行い、その後に行われたアンケートによって、コミュニケーションに問題を感じているという人が多くいた。これは何を意味するのでしょうか。
コミュニケーション不全で起こる問題
ハラスメント問題は、結局のところコミュニケーションの問題に帰結する、ということなのだと思います。
例えば悪気の無いセクハラなどはその典型ですよね。場を和ますつもりで言った性的なジョークがセクハラだというのは、今さら言うまでもないことかと思います。
しかしハラスメントを起こした当事者はどうでしょうか。本当に、心から、何の悪気も無く発した言葉なのだと思います。
これはコミュニケーションの取り方を間違えている、ということ。
若手にはパワハラ、異性にはセクハラ、これを「気軽なジョークで関係をより良くしたい」と本気で考えている人が、少し前まではたくさんいました。
ハラスメントを起こしてしまう人の中には、こういった問題のあるコミュニケーション以外の方法を知らずにここまで来てしまった、というケースが非常に多いのです。
幸い、お引き受けした上記の企業さまについては、弊社の設置したハラスメント窓口に相談は来ておらず、今のところ大きなハラスメント問題は起きていないようです。
しかし、ハラスメントの遠因となるコミュニケーション問題を内在していることが判明しました。
大きな問題が起こる前に、「ハラスメントの芽」を発見できた、とも考えられます。
コミュニケーションの問題を内包していることがわかった組織には、どのような対策が有効なのでしょうか。
弊社は次の取り組みを提案し、企業様で社内プロジェクトを実施することにいたしました。
パーソナリティ診断で問題を可視化しよう
コミュニケーションの問題を解消するには「関わる人がどんな人か」をまずは把握する必要性があります。
以前ご紹介した「PSAパーソナリティ診断」の結果をもとに、ワンオーワン(1対1)の実施を予定しております。
「PSAパーソナリティ診断」は精神医学と大脳生理学に基づいた診断で、「持って生まれた変わりにくい情動」と「後天的に経験や学習によって形成された心の状態」を分けて判断できる、まさに人材の「個性」と「今」の状態を可視化することのできる人材アセスメントです。
上司と部下の関係性やコミュニケーションに問題があった場合、どのような理由が考えられるでしょうか。
例えば、実務的に仕事を進めたいタイプの上司に、賞賛を得たいタイプの部下がついた場合、双方が不満を抱えてしまう場合があります。
「あなたはこういうタイプでこのような指示をしがちですが、一方の部下さんは、こういった指導は苦手で、このようなコミュニケーションが適しています」ということがわかれば、それぞれの違いを理解しながら、より良い関係を築くことも可能になります。
こちらの企業さまがこの取り組みでどのように変わっていくか、今から楽しみです。
組織の健全化への取り組み
今回お伝えしたかったのは、組織の健全化の取り組みもまた、包括的に進んでいくのだ、ということ。
最初はハラスメント窓口の設置というお話から始まりましたが、最終的にはコミュニケーションエラーの解消や社員同士の対話を通じて、健全で良質な組織にしていきましょう、ということになりました。
こちらの企業さまが最初に「ハラスメント窓口を外部委託しよう」という決定をされたのは、とても素晴らしいことです。第三者の目を取り入れ、ハラスメント問題としっかり向き合い、より良い企業を目指すのだという姿勢を、自社の社員に示してもいます。
そして、「ハラスメント窓口を外部委託しよう」という高い志があるからこそ、コミュニケーションの問題にも気づくことができ、対策が取られることになりました。
きっかけは「ハラスメント防止法」でしたが、こちらの企業さまは最初の目的を超えた、大きな気づきを得られたように感じられます。
組織は「個」がつくる
そして、組織健全化にはコミュニケーションの健全化が不可欠であり、健全なコミュニケーションには人への理解が必要…
組織を健全にするには、どこかひとつを対策するだけでは根本的な解決にはなりません。
「ハラスメントが起きたので研修しましょう」というのはもちろん大切ですが、
- そもそもハラスメントが起きないような環境
- 起きないようなコミュニケーションの取り方
- コミュニケーションを取るために個の理解
これらすべてが影響し合っているのだなと痛感させられる事例でした。
組織は「個」がつくります。個性を理解し合い、健全なコミュニケーションで組織をヘルシーに!Tenmaruは、より良い組織作りを包括的にサポートいたします!