この季節は暦のうえでは秋!…のはずですが、毎日暑い日が続きますね。
先週末は、関東にも大型台風接近でドキドキしながら過ごしましたが、皆さんはいかがでしょうか。連日の天気の乱れに体調を崩される方もいらっしゃるかもしれません。
体調管理には気をつけながら、涼しくなるまでもう少しの辛抱…残暑を凌いでいきたいですね。
さて、今回は「ハラスメント対策」についてのお話です。労働施策総合推進法、いわゆるパワハラ法が施行義務化されて1年半が経ちました。皆さまの組織でもさまざまな対策を講じられているかと思いますが、その取り組みは効果的に進んでいますでしょうか?
効果的といっても「何もない」のが普通なので、表面だって出て来てからでは遅いのですが、実は潜んでいることがあるかもしれません。というお話です。
ハラスメント対策は企業の義務!
2022年4月、労働施策総合推進法、いわゆるパワハラ防止法が義務化されました。今までは努力義務であったハラスメント防止処置ですが、現在では企業の義務となっております。
もちろんハラスメントなど企業として起こってはならないのですが、「防止処置をしないと法律違反ですよ」となる法律の施行、その重みは違ってきますよね。
義務化から1年半、すべての企業からハラスメントはなくなったのでしょうか。もちろんそんなことはありません。残念ですが、未だにハラスメントが問題となる企業さまがまだあるのも事実です。
そして、ハラスメント問題を抱えた企業さまから聞く話として、よくあるのが 「同じ人物がハラスメントを繰り返してしまう」というものです。
ハラスメントを起こしてしまった社員に対して、企業は当然ですが対策を行います。双方の話を聞いたり、被害者への心のケアや加害者へのハラスメント研修を行ったりなど… それでも同一人物が、繰り返しハラスメントを起こしてしまうのはなぜなのか。以下の理由が考えられます。
組織の問題?
繰り返されるハラスメント問題。この原因が個人の問題の場合と、組織構成上の問題の場合があります。では組織の場合は、どういった問題があるのでしょうか。
例えば会社とクライアントとの板挟み状態に陥りやすく、かつ、その部門の責任を持つポジションなどは、パワハラを起こしやすい資質を増大させているかもしれません。自分の意見を通すことのできない受動的な業務や、部下の資質や成功の可否がそのまま成果へ直結するような状況も、パワハラが起きやすい可能性があります。
これらの要因は確かに存在しますが、だからと言ってハラスメントが容認されるわけではありません。組織として取り組めるところは積極的な介入が必要になります。 そして問題の本質として、非常によくあるのが、個人の問題です。
個人の問題とは?
個人の問題と言っても、その人が悪い、という話ではなく、個が抱える問題、という意味です。
ハラスメントを繰り返してしまう人に多く見られる傾向として、コミュニケーションの種類が極端に少ないというのが挙げられます。
本人にそのつもりはなくても、強い口調や叱咤激励はその内容によって十分にパワハラになります。しかし、本人にしては熱心に指導しているつもりなので、自覚もできず改善が難しくなります。
これは、コミュニケーションのバリエーションを持たないので、失敗に対して大声で制圧する方法しか知らない、異性に対してセクハラ的なコミュニケーションしか知らない、などが原因になっています。
また、ハラスメントを起こしやすい人は「ちゃんとしなければ」という思いが強く、目的意識も高いため、仕事の面において比較的優秀な人が多いように思われます。 一方で、優秀な人だからこそ、上司の立場になると、周囲にも自分と同じようなポテンシャルを要求しがちです。
もちろん人は人それぞれ。同じように動ける人とそうではない人がいます。しかし自分ができることが、なぜできないか、それが理解できない。そして、対処の方法もバリエーションが少なく、なかなか思うようにいかない…
そんな時に、憤りと共にハラスメントが起きやすいなという印象を持ちます。 組織としての対処 資質と環境、両方が揃うとそれだけハラスメントが起きるリスクは大きくなります。企業はどのように対処すべきでしょうか。
コミュニケーションスキル
ハラスメントを起こした人には、ハラスメント研修を受講させる、上長や人事から注意喚起する、場合によっては懲戒など処罰を与えるなど、会社によってさまざまな対策を講じていると思います。
これはもちろん当然な対策ですが、それに加えて、コミュニケーションの種類を増やすための指導も行うことを強くおすすめします。
上記にあるように、ハラスメントを繰り返してしまう人は、コミュニケーションの種類が貧弱な場合が多く、それがハラスメントに繋がってしまいます。
コミュニケーションは、相手のタイプによって使い分けるものだということを本人も理解し、相手や状況によって使い分けていくための、いくつかのコミュニケーション方法をインプットすることでハラスメントのリスクが軽減されます。
ハラスメントを繰り返す人は、それをしてしまうことは悪いことだと認識している場合がほとんどです。具体的な解決策が思いつかない、要は本人も困っている、ということ。
「加害者が悪い」という安易な着地をせず、問題に一緒に取り組む伴走型の対策が必要になります。
メンタルケア
上記の通り、ハラスメントを繰り返す人は、ちゃんとハラスメント行為を悪いことだと認識しています。 それでも行為に及んでしまう背景には、メンタルの不調が隠れているケースが非常に多いのです。
同じ仕事、同じストレスがかかっても、その耐性には個人差があります。
特に営業職で起こりやすい事例ですが、ハラスメントを繰り返す人はお客様の要望に応えなければという思いが強い人が多く、そのぶんプレッシャーを強く感じやすく、結果として強いストレスを抱えることになります。
個別のメンタルケア、1 on 1などが対策として挙げられるでしょうか。
対策の限界
組織としてできるのはここまでです。しかし、これら対策は必ず効果を発揮するものなのでしょうか。
もちろんこれらの対策でハラスメント問題を解決できた組織もたくさんあります。しかし、残念ですが、これらの対策をいくらしても、それでもハラスメントを繰り返してしまう人がいるのもまた、事実です。
上記に挙げております「メンタルケア」の領域、ケアまではカウンセリングなどで対処が可能ですが、特に「メンタルヘルス」に係る問題となると、組織としての対策は難しいでしょう。 ここから先は心療内科の領域になり、専門性が求められます。
精神の問題はそれこそ個人の領域です。過去の出来事や成育歴、発達障害や認知の歪みなど要因は多様ですが、組織として立ち入ることはできません。 組織内で起こる問題とはいえ、対策には限界があることもまた、認識しなければならない、ということですね。
領域と対策を明確化しよう
ハラスメントを繰り返してしまう人というのは存在していますし、改善が難しいというのもまた事実です。
だからこそ、現実を把握しつつ、ハラスメントが起きた際に、組織として対応できること、できないことを事前に検討しておくことをおススメします。
ハラスメントが起こった際の対策は、ヒアリング、被害者のケア、加害者の研修などが挙げられますが、2度3度とハラスメントを繰り返した場合は、ハラスメント研修に加え、コミュニケーション研修、1on1や社内カウンセラーへのアサインなど…
それでもハラスメントを起こす場合は、心療内科への受診やカウンセリングを提案する…etc
これら、社内でハラスメントが起きた際の対策フローを作っておくと良いでしょう。社内にも周知することで、安心感が生まれます。
とてもシビアな話になりますが、ハラスメントは損害を与えれば立派な不法行為に当たります。あまりにハラスメントを繰り返すようであれば、最悪の場合、懲戒とせざるを得ない場合も出てくるでしょう。
メンタルヘルスが要因となるケースに関しては、組織としても対策に限界があるのも事実です。
それでも、ハラスメントの加害者が悪い、と断罪する前に、組織としてできる限りの対策を取っていただきたいのです。
ハラスメントを繰り返してしまう人は自身の行いを良くないことだ、と認識はしています。それでも繰り返してしまうことに問題の根深さがあるのですが、できる限り寄り添い、一緒に乗り越えていければ良いですね。
いかがでしたでしょうか。今回は少々重たい内容になってしまいました。組織としてできることには限界があり、その「線引き」もまた必要ということを認識するのが大切なのです。組織として対応可能な領域を考えるきっかけになれば幸いです。
弊社でもハラスメント窓口設置サービスをご案内しています。ハラスメント対策のための窓口設置の委託、研修、個別指導などご検討の際は、ご相談ください。